ドクターヘリ

いつもの平凡な土曜日だった。高2と高1になる息子と娘は友達と遊びに行っており、私も買い物をしに家を出ていた。車を運転中、ソフトボールの試合に参加中の夫から電話が掛かってきた。でも、電話の声は夫ではなく彼の友人の声だった

「もしもし!奥さん?!旦那さんが試合中に倒れて意識がなくて、今、救急車でドクターヘリに乗せるために搬送中です。搬送先が決まり次第また連絡するから電話に出れるようにしといて下さい」 

「え?!意識がないって頭でも打ったの?急に倒れたんですか?」

「詳しくはハッキリしないから、とにかく連絡がつくようにだけしといて!」             

電話は一方的に切れてしまった。

(え~と、・・・どうしたらいいんだっけ。)

あまりにも非日常的な言葉の羅列に私はパニックになった。
と、とにかく夕方からの仕事を休む旨を伝えよう次は?え~と、子供たちに連絡しなきゃだ。他にすること…入院の準備もしておいたがいいよね?普段飲んでる薬も持って行かないと
頭をフル回転させてるつもりなのに、もどかしい程思考は混乱していた。
倒れて意識がないとなると、脳しんとう、脳卒中、心筋梗塞、頚髄損傷…一体何が起きてしまったの?暫くして、夫の友人から搬送先が決まったからドクターヘリでA病院に向かうと連絡が入った

救急処置室に行くと夫は目を開けて仰向けに横たわっていた。声を掛けたが返事はない。
「わかる?わかるなら瞬きしてみて」
すると2,3度瞬きをして返してくれた。
「首を損傷されています、今はまだショック状態にあるようです。残りの検査があるので終わったらまたお声かけしますね」
横で看護師が優しく説明してくれた。

その後1時間ほど経っただろうか、夫が話せるようになったからと呼ばれた。
頭はしっかりとしていて、職場の○○さんに連絡するようにとか幾つかの指示を私にしてきた。意外とハッキリと受け答えが出来ていることにホッとした。でも、
「首が酷く痛くて体が動かせないし、感覚もない」
と、本人から聞いた時、コレは大変なことになってしまったのではないか…私は突如として絶望の淵に立たされた。いや、奈落の底に突き落とされたと言うほうが合っていたかも知れない。
ズーンと胸のあたりが重たくなり強い不安に襲われた。

「後で先生から説明があります。お呼びしますので、待合室でお待ちください。」
看護師が気の毒そうに告げて去って行った。

~入院から退院まで~(ドクターヘリ)

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