急性期病院からリハビリ病院へ転院となり、これ迄よりもっとリハビリに力を入れていくことになる。
リハビリは午前と午後の2回で土日祝も関係なく毎日行われる。
OTとOPの担当が決められ患者一人一人に寄り添ったメニューが組まれる。
また、日常生活を送ることを目標とするため、前に入院して病院とはい違い基本病衣はない。
朝起きると寝巻から運動のしやすい洋服に着替える。1日中寝巻姿でいるよりは確かに意識も変わり生活に張りが出るだろう。
希望すれば病院からの貸し出しもあるが、それも寝巻とリハビリに適した日中着る服に分けてあり着替えは必須となっていた。そして結構レンタル料はお高めで利用している人は殆どいなかった。
夫は以前よく着ていたジャージやウインドブレーカーに着替え張り切ってリハビリに挑んだ。
面白いと思ったのは、以前の入院患者がみな同じ服を着ていた時と違い、好みの洋服を着ることで個性を感じられることだった。
シンプルな服、フリルの付いたかわいい服、ブランドロゴの入った服…その人それぞれの趣味趣向や生活背景までがなんとなく想像できた。
患者は高齢の女性が多く、50代の夫は若手として扱われ看護師さんやリハビリの療法士さん達は「まだ若いから」と事あるごとに口にした。
リハビリはその頃は自由に見学できたのでよく私も付き添っていた。リハビリ室はとても広く沢山の施術台が並べられ療法士の人数も常に15~20人ほどは居たように思う。
筋トレのマシーンも充実していて、電磁治療を受けるスペースがあったり、鍼灸治療も行われていた。
ある一角では高次機能障害の方々がリハビリの一環としてカラオケで盛り上がっている。
この病院では『川平法』*というリハビリ訓練が取り入れられていて、手の指一本一本から足の先まで丁寧に施術が行われており、リハビリは1時間から1時間半ほど時間を要した。
毎日これらを続けることで体の機能は更に回復していった。たぶん、この頃が一番体が動いていた様に思う。
最初は車いすで移動していたがリハビリ室まで杖歩行で行けるようになったし、スプーンでしていた食事も『箸ゾウくん』という補助機能がついた箸で摂れるようになった。
文字も書けるようになり、スマホも自分で扱える為、iPhoneのsiriはお払い箱になってしまった。
職場復帰も夢ではなくなってきていた。
*『川平法』麻痺した手や足を治療者が促通操作(川平法)して、患者さんに意図した運動(随意運動)を実現・反復して貰い、その反復で大脳から脊髄までの神経回路を再建・強化する治療法。
https://kawahira.org/
箸ぞうくんは今も愛用していて、焼き魚も楽々食べれる優れもの。外食の際にも持ち歩きます。