リハビリ

ICUでの面会は親族のみに限られ時間も制限があった。インターホンで名前を告げ自動ドアを開けてもらい、ロッカーにすべての荷物を入れ靴も病院のサンダルに履き替える。最後に手指の消毒を念入りに行ったうえでやっと入室する事が出来た。
病室に行くと、やはり夫は仰向けのままで首にはコルセット、腕に点滴、尿カテーテル、オムツをされ、病衣は申し訳程度に上から掛けてある状態だった。
「あ、ちょうど良かった。頭かいて」
四肢に麻痺がある為、自分の頭も掻けずに困っていた様だ。ベッドには息を吹きかけると反応するナースコールが設置されている。
「あと指を広げてくれる?ギュッと握ったままで痛いんだよね。」
実際の夫の手は、力なく開いたままだった。私は擦ってあげることしか出来なかった。

昨日入院してまだ寝たきりなのに、「今日からリハビリが始まります」と看護師が伝えに来た。
どやどやと威勢のいい先生が二人現れて、夫の動かない手や腕の曲げ伸ばしをイチニ!イチニ!とリズミカルに声を掛けながら施術してくれた。リハビリは1日でも早く始めるのが大切らしい。
「足は動きますか?」の問いに夫の右足が左右に揺れた。私は驚いた。少し感覚もあるらしい。
リハビリが終わってその事を主治医に伝えると再度検査がなされ、随意的肛門収縮があるから完全損傷ではないと診断された。
それを看護師っだった姉に話した。姉曰く、頚髄損傷で寝たきりの状態からでもリハビリで歩いて退院していく患者を何人も見てきた。完全損傷でないならその可能性は十分にある。たぶん中心性損傷みたいだけどその割に足の動きが少し悪いかなという回答だった。
私には詳しくは良く分からなかったが、また歩けるように成るかも知れない!と一筋の希望がさしてきた。

病院を出る前に会計窓口に寄るように言われ、そこで限度額適用認定証の説明を受け、コルセット代の請求書が渡された。ドクターヘリ自体は費用は掛からないが、そこで施された医療行為に対しては費用が発生する為それも後日請求されるらしい。
夫がケガをして以来ずっと悪い夢の中をふわふわ漂っている感じだったが、請求書を見た途端にグイと現実世界に引き戻された。お金の事も考えなきゃだな。
職場復帰も出来るかわからないな。
有給休暇はどれくらいあるんだろう。
生命保険会社にも問い合わせておかないと。
今の貯金の残高は…。

たった1日のほんの一瞬の出来事が人の人生を大きく変えることって本当にあるんだ。。。
と、深いため息が出た。

~入院から退院まで~(リハビリ)

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