ICUに面会に行くと、リハビリの効果か初日よりも更に足を左右に動かせるようになっていた。
その日は、看護師が箱のような機械を持って現れ、
「ちょっと苦しいですよ~」と優しい声で言った。
が、機械のスイッチを入れた途端ゴォーと音が鳴り、そこから延びるホースが口にあてがわれ無理やり深呼吸みたいなことを5回行うという荒療治(に見えた)だった。これを1日に3回5日間続けるそうだ。頚髄損傷では呼吸筋にも影響が出るため必要な処置ではあったようだが、苦しいから嫌いだと夫は言っていた。
その治療が終わる頃には、一般病棟のナースステーションに一番近い部屋へ移動となった。
今日は10時半からHOBです、と看護師が伝えに来た。入院して4日目からその治療は始まっていたが一般病棟から行くのは初めてでベッドごと運ばれていく夫を見送った。
【高圧酸素療法(HOB)】とは密閉空間(カプセル)に入り濃度100%の酸素を吸入しながら装置内の気圧を2気圧まで上げる。すると体内の酸素量が10~20倍に増えるというものだ。
体の隅々まで酸素を行き渡らせ、低酸素状態になっている組織に働きかけ改善を図る。
様々な疾患(突発性難聴、網膜動脈塞栓症etc…保険適用となる疾患や回数には基準が設けられている。)で治療効果が期待されている。
時間は加圧と減圧の時間を含めると90分程だが、夫曰く、治療中は透明なカプセルからテレビが見れるようになっていて、外の人と話せるマイクもありそれほど長くは感じなっかたそうだ。
効果のほどはすぐには実感できなかったが、特別な治療を受けることで回復へのモチベーションはかなり上がった。
移動した病室では、androidスマホスマホをアームで固定してTVを見れるように設置してみた。
ちょうどラグビーのワールドカップ2019があっていて、スポーツ好きの夫は日本の大躍進に一喜一憂していた。
それとiPhoneのsiriの機能で電話やメールが声の指示で出来る事を伝えると、もう次の日から電話が掛かってくるようになった。
また、もともと夫は日記を付けていたので、記録するために私に毎日メールも送ってきた。
(20数年前にガラケーを使っていた頃は、こんな便利な世の中になるなんて全く想像していなかったなぁ…)
特にsiriには世話になった。
首も動かせない夫にとって素晴らしいアシスタントだ。
「ヘイ!siri!○○に電話して」
「ヘイ!siri!今日の天気は?」
「ヘイ!siri!今何時?」
ちょっとご陽気な感じもまたいい。
~入院から退院まで~(高圧酸素療法)