夫はケガをしてから常に首や肩、手足の痛みや痺れに悩まされていた。ほぼ全身だ。
少しでも楽になるよう、腕を乗せるクッションを置いてみたり家族で代わる代わるマッサージをして紛らわせていた。
それでも神経を損傷しているため、突然理不尽な痛みが起こる日も度々あった。
「痛い!痛い!看護師さん呼んで!」
「もう、こんなのは我慢できない!痛いっ!!」
と普段見ることのない夫の様子にどうしていいか分からない。声を掛け擦っても
「違う!痛い!触るなっ!」
と大きな声を上げ、もう周りも見えない様子だ。
私がオロオロしながらナースコールを押すと、看護師さんが来て何かしらの処置をしてくれる。
ベッドの角度を変えたり、背中にクッションを挟んだり、保冷材で冷やしてみたり。
すると、少しづつ落ち着いてきて痛みも我慢できる程度まで治まってくる。
何が良かったかはワカラナイけど、たぶん何かをしようと頑張って下さる看護師さんの気持ちが、一番効いているような気がした。
事故から1週間が過ぎたころ、精神科医が病室を訪ねてきた。
気分は如何ですか?眠れていますか?そして率直に、
「生きることが辛いと思うことはありませんか?」と。
…そう、ベッドに寝たきりで手も足も思うように動かず、我慢できない程の痛みが続く。
私だったら耐えられない。傷付いたのは体だけでは済まないだろう。
でも、夫はあっさり「いいえ」と答えた。
精神科医は、眠れなくなったり気分が落ち込む時は薬を処方するので遠慮なく相談してくださいと言ってカウンセリングを終えた。
この事に私は少し驚き、後にあの時は本当に平気だったの?と聞いたことがある。
「うん、絶対にリハビリを頑張って元通りになると信じていたから。」と夫は平然と答えた。
信じる者は救われるなんて言うけど、マインドって本当に大切なんだと思った。そう言えば、有給休暇を消化する前には退院したいともよく口にしていた。重症なのに…。
クヨクヨするのが体に一番良くないのかも知れない。
知らぬが仏という言葉もあるが、逆に私のほうは毎日心配だった。
このまま社会復帰出来ないとなった時、それを自らが自覚した時、尿カテーテルが外れても自発的にオシッコが出る可能性は50%と知ったら?!いったいどう思うんだろうと。
私は家族の前で泣いたりはしなかったが、お腹も痛くないのに事故の日以来、ずうっと下痢が続いていた。ストレスに違いない。体は正直だ。
やっぱり、クヨクヨするのが体に一番良くないのだろう。