保険請求

頚髄損傷

退院して落ち着いてきたころ、そろそろ保険の請求をしようと書類を揃えた。
生命保険の入院医療保険の請求は簡単だった。今までの領収書と請求が10万を超えるものは診断書を付けるといったものだった。
傷害保険の方は領収書と、保険会社によって書式や呼び方は違うが「障害診断書」「傷害保険後遺診断書」と呼ばれるものがあり、ケガをした経緯や身体の状態を詳しく記入する欄があった。
特に夫に関係していたのは
・中枢神経系(脊髄損傷を含む)または精神の障害・胸腹部の著しい障害
・脊柱障害
・運動麻痺・欠損・短縮
・手指・足趾の運動障害
・四肢関節の運動障害
などの項目で、細かな可動域の角度の記入や麻痺のある個所を図で示すようにするなどして障害状態をこと細かに記入するようになっていた。
もちろん私が見てもなんのことだか全く分からない。ただ、障害が残っていることは確かだった。
後遺症状に応じて降りる保険金の割合があるのだが、半分の5割くらいは受け取れるものと思っていた。
しかしながら数週間後に戻ってきた保険会社からの返事は惨憺たるものだった。(以下抜粋)

~障害給付金のお支払い判定結果について~
障害診断書をもとに給付金支払い可否を検討させていただいた結果、下記の理由により障害給付金はお支払いできないものと判断させて頂きました。
何卒、事情ご賢察いただき、ご了承賜りますようお願い申し上げます。
「食物の摂取、排便・排尿・その後の後始末、および衣服着脱・起居・歩行・入浴のほとんどが自力では困難でそのつど他人の介護を要する状態」とはいえず、お支払い自由に該当されませんでした。
また、障がい診断書「四肢関節の運動障がい」については、両上下肢の3大関節(上肢においては肩関節、ひじ関節および手関節、下肢においては関節、ひざ関節および足関節)すべての運動範囲が、生理的運動範囲の2分の1以下でないため、約款別表「関節に著しい障害を残すもの」とは言えず、お支払い自由に該当されませんでした。
したがいまして、ご不自由な状態とは推察いたしますが、約款上の障がい状態に該当されず、障がい給付金はお支払いできないものと判断いたしました。

上記の内容に涙も出ずただ茫然とした。こんなに障害が残っているのにどうして?
服を着替えるのも、風呂に入るのも介助が必要だし、万が一転びでもしたら起き上がることすら出来ない。歩けはしても四肢のバランスが取れず危険だし階段も長い距離も困難で立位は5分がやっとといったところなのに。何故…。
色々と考えを巡らせるうちに思い当たることがあった。
障がい者手帳を早く発行したかったために、早い段階で症状固定の診断書を書いてもらったことだ。
その時は夫の回復は目覚ましく、絶好調のときだった。私は、もう十分に頑張ってくれたし、これ以上の回復は望めないと思い医師に診断書を請求したのだ。体の状態が悪くなることなんて全く予想していなかった。疼痛が酷くなりこわばりや痺れが増していくなど思いもしなかった。
それと念のために、診断書は保険会社に渡す前にコピーをとっていた。
よく見返すと気になる箇所がいくつかあった。はなから測定していない項目(脊柱障害、手指・足趾の運動障害の測定や、運動麻痺部分の図へ入れる斜線の記載が無かった。)があったり、明らかに数値がおかしい箇所があった。
試しに夫に可動域の確認をすべく実際に肩のの屈曲(前に腕を上げる)、進展(後ろに腕を上げる)を見せてもらった。あくまで素人の目線だが屈曲は90度ほどで伸展は5度くらいにしか見えない。診断書には屈曲140度伸展50度とある。
屈曲140度は調子のいい時で無理をしていたならまだ考えられるが伸展50度はありえないと感じた。
夫の肩は凝り固まったように後ろへは殆ど動かなかったからだ。
すると夫が思い出したことがあった。なんでも測定の時に体が痛かったため本来なら立位や座位で測定するところをベッドに寝たまま測定したとの事だった。また伏臥位(うつ伏せ)も取れなくなっていたので、もしかしたら肩のは横伸展は臥位(横向き)で測ったのではと推測してみた。
仰向けの状態で腕を上げたらどうなるだろう…腕の重さが手伝って本来より角度が出てしまうのではないか。立位で耳まで腕を上げるのと、仰向けに寝て耳まで腕を持っていくのでは全然負荷が違うのでは?
横向きに寝て腕を後ろに回すのと、立って腕を後ろにあげるのではコレもまた違うと思う。
また、夫は負けず嫌いの頑張り屋なところがある。動かすと激痛が走ろうとも無理やり力を振り絞って無理な測定をした可能性もぬぐい切れない。

保険会社から送られてきた書類の最後に【本件に関するお問い合わせ先】が記してあり早速電話をしてみた。診断書から判定したものであり書類に記載してある通りの理由で保険金は支払えないと再度説明を受けた。でも、もし現在の状態と診断書の状態が異なるのなら再度診断書を出してもらえば審査をし該当すれば保険金は支払われますとも教えてくれた。
どう見ても後遺症があって体が不自由な障がい者にしか見えない夫…。
人生で頑張らないといけない時って何度かあるらしいけど、それが今なんだと思った。
泣き寝入りはしたくない、ダメもとで出来る限りのことをやろうと電話を切るときに決意した。

~入院から退院まで~(保険請求)

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